再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
苦しくて、辛くて、私はもがき続けた。
なるべく苦しくないようにと慎重に処置を進めてくれる敬を何度もにらみつけた。

う、うぅうー、うううー。

口をふさがれて声を出すことはできないけれど、手足をばたつかせた。

「もう少しだ、頑張れ」
涙でボロボロになった私に、敬が声をかける。

新太先生は私の手を握り、肩や背中をさすってくれている。

処置を始めるとき、「よかったら先生がやりますか?」と敬が聞いてくれた。
きっと患者が私だってことで気を使ってくれたんだろうし、実際新太先生の方が上手いんだろうなと私も思う。
しかし、
「杉原先生に任せるよ。僕は彼女についていてやりたいから」
そう言って、私の背後に回った。

処置の間はどんなに暴れようとしても新太先生が体を押さえていて、ピクリとも動かない。
苦しさの中での抵抗だからすごい力だったはずなのに、先生は何食わぬ顔で私に付き添っていた。
背中に当てられた新太先生の手がただ温かくて、私はかろうじて自分を保っていられたと思う。

「大丈夫・・・大丈夫だからな」
耳元でささやかれる声。
涙と鼻水でグチャグチャの私はギュッと先生の手を握りしめた。
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