再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
病棟に上がって一時間ほどで喉の違和感は消えていった。
その間に奥さまや副院長がお見舞いに来てくれてバタバタした時間を過ごした。

「じゃあ今夜は新太君に任せるから、頼んだよ」
「はい」

不思議なことに副院長はすんなり帰って行った。



「そろそろ麻酔もとれただろう。水を飲むか?」
「うん」

小さなコップに入れられたお水を一口、恐る恐る口にする。
ゴックン。
お水を飲むのがこんなに怖いと思ったことはなかった。
それでも、違和感も痛みもなく胃に落ちていく水。
私はホッとして息をついた。

「大丈夫そうだな」
「うん」

「もう少ししたら警察の方が話を聞きたいってやって来る。平気か?」
「ぅ、うん」

今回の原因が毒物である以上、警察の介入は仕方がないと思う。
でもなあ・・・
私はどうしても気になることがあって、不安な気持ちが消えない。

「ねえ先生、」
「は?」

無意識に新太先生を呼んだだけなのにポカンと口をあけられた。

「あの・・・新太先生?」

先生の眉間に寄ったしわの意味が分からなくて、もう一度呼んでみた。
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