再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司

今回の毒物混入事件ではその場にいたメンバーが疑われている。
ワイン自体に毒物混入の痕跡がない以上打倒とも思えるが、疑いが仲間に向けられるとなれば穏やかではない。
その中でも、所在の確認できていない塙くんにとってはかなり不利な状況だ。

「塙先生から連絡があれば知らせてください」と事情を聴きにきていた警官が念を押すように言っているとき、一瞬環の視線が泳いだ。
もしかして連絡をとっているのかと不安になったが、子供じゃないんだから無茶はしないだろうと高をくくっていた。


「皆川先生、環がいないんですか？」
きっと看護師からでも連絡を受けたんだろう、帰ると言っていたはずの杉原先生が俺のもとにやってきた。

「少し前から姿がみえない」
今更ごまかすこともできず、素直に打ち明けるしかない。

「困りましたねぇ」
「ああ」

こんな時にいきなり姿が見えなくなればみんなが心配するのはわかっているはずだ。
だから、きっと何か事情があるはず。それが何なのかはわからないが、正直嫌な予感しかしない。

「とりあえず院内を探してみましょう」
「そうだな」