再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
私たちを取り巻く警官の数はどんどん増えていき、あっという間に周囲を囲まれた。

「もう逃げ場はないぞ」
警官が説得するけれど、
「うるさいっ」
塙くんの耳には届かない。

困ったな。このままじゃらちが明かない。それに、まだ病み上がりの私の体もつらくなってきた。できればどこかに腰を下ろしたいけれど、そんな状況でもない。
何とかして塙くんを説得しなければ、そう思って声をかけようとした時、

ガサ、ゴソ。
背後から物音。

瞬間的に振り返る塙くん。
それが後ろから近づいてきていた警官だとわかった途端、持っていたナイフを自分に向けた。

ダメ。塙くんダメ。
私は、声にならない声をあげる。そして、

「和田先生っ」
塙くんの叫び声。

一瞬、自分でも何が起きたのか理解できていなかった。
< 156 / 200 >

この作品をシェア

pagetop