再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
「環ちゃん、どう?」
黙々と食べる私の顔を奥様が覗き込む。

「美味しいです。すごく」

そう言えば春になると母さんがたけのこご飯を作ってくれたっけ。
子供の頃はあんまり好きじゃなかったけれど、今思えば懐かしい。

「そう、よかったわ。お父さんが夕方とってきてくれたからアクもなくておいしいでしょ?」
「ええ」

副院長、忙しいのにまめだな。

「まだ残っているから、明日は木の芽あえにしましょうね」
「ええ。明日は土曜日で病院もお休みなので、私も手伝います」
「そう、助かるわ」

たけのこのほかにも魚やお肉、山菜も並んだ豪華な夕食は奥様の手作り。
すごいなあと感心しながら私はありがたくいただくだけの生活だから、せめて休みの日くらいは手伝いをしないと。

「無理しないでね。環ちゃんはお仕事があるんだから」
「大丈夫です。お休みですることがないので」

正直、部屋の片づけと洗濯を終わらせたら病院へ行って溜まった仕事を片付けようと思っていた。だからちょうどいい。
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