再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
「環の中で、俺は好きでもない人にキスできるような男に思われていたの?」
「それは・・・」
「何?」

なんだか今日の新太はすごく意地悪だ。
それでも、私にだって言い分はある。

「新太はすごくかっこいいし、仕事もできるし、女子の間でも人気があるから、私なんて相手にするはずないと思ったの。それに、昔フラれたし」
「それは誤解だったって話したよな?」
「うん、そうだけれど。敬が、新太と西村先生は付き合っているって言ったから」
「環は杉原君の言葉をそのまま信じたんだ」
「うん、そう」

まさか敬が嘘を教えるなんて思わないもの。

「なんで俺に聞かなかったんだよ」
「だって・・・」
めんどくさい女だと思われたくなかったとは言えない。

「バカだな」

呆れたような表情からクスッと笑った後、新太の顔が近づいてきた。

チュッ。
小さな音を立てて重なる唇。

チュ、チュッ。
一瞬で離れて行った唇を追いかけて、今度は私からキスをした。

位置を変え角度を変えて絡み合う口づけが深くなるうちに新太のペースに持っていかれ、右手が使えない私は体を支えることもできず寄り掛かって身を預けるしかない。

「ウウゥーン・・・苦しい」
段々酸素が足りなくなってきた。

それでも、新太は私を抱きしめたまま離してはくれなかった。
< 165 / 200 >

この作品をシェア

pagetop