再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
ここで話が終われば物語ならハッピーエンド。
でも、現実の世界にはエンドマークはない。
新太との思いが通じ、西村先生とのことも誤解だったとわかり、お互い好きだと認識しあえたところまではよかったけれど、その先には少し厳しい現実が待っていた。

「はい、口を開けて」

私が食べている横から箸でつまんだキュウリを差し出す新太。

「いいよ、自分で食べるし」
「でも、怪我したのは効き腕だろ?」
「そうだけれど、箸はダメでもフォークくらいは使えるから」

いくら個室で周りに人がいないとはいえ食べさせてもらうのは恥ずかしい。

「いいから、あーん」

もう、あーん。
仕方なく口を開けてしまう自分が悲しい。

「あ、トマトは好きじゃないからいらない」
「だめ」

あーぁ、嫌いって言ったトマトを差し出された。

「もー」
パクン。
文句を言いつつも食べてしまう私は完全に新太に懐柔されてしまっている。
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