再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
「ごちそうさまでした」
「はい、ごちそうさま」

今食べたのは奥様が作ってきてくださったお弁当。
新太といることがわかっていて、わざわざ二人分届けてくださった。

「明日は自分で食べるからね」
いつまでも新太に食べさせてもらうわけにはいかない。

「傷口次第だな」
「うん」
確かにそうね。

自分でやっておいて言うのもおかしいけれど、私の右手の傷は結構深くて大きいものだった。
もちろん縫合しているから傷自体はすぐにつく。しかし、

「大丈夫。10日もすれば抜糸だからすぐに使えるようになる」
「そうだね」
「でも、」
そう言って、新太の言葉が止まった。

恐る恐る顔を上げると、そこにいたのは病院でいつも見る医者の顔をした新太。

「日常生活に困らない程度にはすぐに回復するだろう。しかし、元通りカメラができるようになるかはわからない」

自分でも気が付いていたことだけれど、はっきり言われるとさすがにへこむ。
もしカメラができなくなったら、私は何をするんだろう。

「それとな、」
さらに険しい顔をした新太が、まっすぐに私を見ていた。
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