再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司

微妙な距離感

副院長の家に帰ってからはのんびりと穏やかに過ごした。
朝起きて奥様が作ってくださったご飯を食べて、本を読んだり、散歩をしたり、たまには一緒に料理をしたり。学生時代から勉強しかしてこなかった私には新鮮な体験だった。
そしてこの時間が私の心と体を癒してくれて、少しづつ食べたり眠れたりするようにもなった。


「あら、環ちゃん今日は早いのね？」
いつもより早い時間に起きてきた私に不思議そうな奥様。

「ええ、来週から勤務なので慣らさないとと思いまして」
「そうね、いつまでもお寝坊さんでは困るものね」
「ええ」

へへへ。と笑ってみたものの、最近は奥様に甘えてばかりで朝寝坊が増えていた。

「おや環ちゃん、珍しいね」
起きてきた副院長にまで言われてしまった。

「おはようございます」

どうやら私には朝寝坊のイメージが定着してしまっているらしい。
いくら静養中とはいえ少しのんびりしすぎていたと今更ながら反省する。

「ところで、本当にいきなりフルタイムの勤務でいいのかい？」
テーブルに付き、私の方を見る副院長は心配そうな顔をしている。

「ええ。体もすっかり回復していますし、今まで通りの勤務でお願いします」
「そうか、わかった」

3ヶ月の休職でゆっくりと静養をとった私は、来週から勤務に復帰する。
右手の動きにくさが完全に消えたわけではないけれど、今のところ不便を感じることもない。
仕事に戻ることに正直不安な気持ちがありながらも、やはり現場に戻りたくて復職を決めた。
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