再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
研修医の頃、何度かこうして場所を奪われたことがある。
仕事には妥協しない新太は完ぺきを求めるから、「できないんなら変わるよ」と自分がやってしまう。
患者さんのことを思えば当然のことだけれど、カメラを奪われた方はダメを突きつけられるようでへこんでしまう。



「ありがとうございました」
検査室から出てきた新太に、私は頭を下げた。

自分のできないところを補ってもらった以上はお礼を言うべきだろう。

「出過ぎたことかもしれないが、あれ以上時間をかけるべきではないと思えたし、君にも負担がかかっているようだったから手を出してしまった。すまない」
「いいえ」
全ては私の責任で、何の言い訳もできない。

仕事以外ではとっても優しくて甘々な新太だけれど、やはり仕事になると厳しい人。そこがまたいいけれど、注意されれば落ち込んでしまう。
出勤初日から最悪のスタートになってしまったなと肩を落としていた時、

「皆川先生、います?」
聞きなれない声が内視鏡室に響いた。
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