再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
「どうした、元気がないな」
逃げ出した職員食堂で敬に声をかけられた。

「うん、色々うまくいかなくてね」
つい愚痴ってしまう。

「ケガもして、3ヵ月も休んでいたんだ、簡単に元には戻らない。わかっていたことだろ?」
「そうだけれど・・・」

元気のない本当の原因は仕事のことではない。
でも、そんなことを敬に言うわけにもいかない。

「まさか、悩みの種は仕事以外のことか?」

うっ。
さすが古い付き合い、鋭い。

「お願い、それ以上聞かないでよ」
口に出してしまったらよけいに落ち込みそうだもの。

「お前なあ」
呆れたようにため息をつくと、敬は向かいの席に座った。

「環、お前本当に皆川先生でいいのか?」
「え?」

まさか敬にそんなことを言われるとは思っていなくて、動きが止まった。

「お前にとって一緒にいたい相手は皆川先生なのかってこと」
「それは・・・」
「そんなに困った顔するなって。俺はただ、『勢いで決めるな』『ちゃんと考えろ』って言いたいの。一生の相手なんて簡単には決められないはずだろ?」
「それは確かにそうだけど」

このときの私は敬が一体何を言いたいのか、その真意がわからなかった。
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