再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
週末、土曜日。
ホテルのロビーでランチの待ち合わせ。
堅苦しいのは嫌いだろうからと、1対1で会うことになった。

約束の時間は正午12時。
不思議なことに写真も渡されず、名前すら聞かされないままここで待つように言われた。


「お待たせしました」
時間ちょうどに背後から声がかかり、
「はい」
私は振り返ってゆっくりと顔を上げる。

まず目に入ってきたのは、ピカピカに磨かれた高そうな靴。
服は綿のパンツにジャケットとカジュアルな装いながら、着けている時計もかなりの高級品。
顔を見なくてもお金持ちなのが分かる。

「初めまして、和田環で」

最後まで自己紹介が終わる前に言葉が止まった。

「え?何で?」

そこにいたのは見知った顔。
間違ってもお見合いの席に現れるはずのない人物。

「副院長の悪だくみだ」
「悪だくみって・・・」

意味が分からない。
冗談にもほどがある。

「まあ怒るな。副院長も結構本気らしいから」

本来ならもっと怒ってもいいだろうと思う状況で、飄々としている男性。
それは私の同期、杉原敬だった。
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