再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
「ずいぶん大人になったな」
「え?」

「だって、あの頃は」
「やめてください先生」

あの頃のことは思い出したくない。
できることなら私の記憶から消し去ってしまいたいのに。

「なんで?立派な医者になったなって褒めているのに」
「そうは聞こえません」

まだまだ駆け出しで、未熟なのは自分でもわかっている。

「そんなことはないよ。よく頑張った」
ポンと頭に手を乗せられ、私の心臓がドクンとなった。

皆川先生に会うのは3年ぶり。その間私に起きたことを先生が知るはずもない。
それなのに、すべてを見透かされたような気になった。

「皆川先生、それはセクハラです」
そう言いながら、いきなり間に入ってきた塙くん。

「そうか?」
「そうですよ」
「ごめんごめん、気を付けるよ」
「そうしてください」

塙くんに、「誰に向かって言っているのよ」って叱りたいのをグッとこらえて、私はそっと席を立った。
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