再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
本来私たちの就業時間は朝8時半から夕方の5時半まで。
外来が始まるのが9時半だからそれまでの時間を使ってカンファレンスを行う。
とはいえ、医者はタイムカードがないので普段から9時半の外来ぎりぎりにやってくる先生も多い。
そんな先生たちにとって、週に一度のカンファレンスはかなりの早朝出勤だろう。

「はぁい、次の患者」
司会の先生の声。

「はい。患者は潰瘍性大腸炎の急性増悪です」
私は座ったまま説明を始めた。

合同カンファレンスの場所は普段放射線科の先生が画像の診断に使っている読影室。
広いのと、壁一面に画像が表示できるのが利点でいつもここを使わせてもらう。
画像診断のために照明が落とされている中、薄暗い部屋に今日も30人ほどの医者が並んでいる。

「薬物治療の効果も薄れてきていますし、手術の適用はいかがでしょうか?」
一通り病状を説明し私は周囲を見回した。

私が受け持った患者は20歳の女子大生。
以前から通院して治療を続けていたが、10日ほど前に激しい腹痛と出血で緊急搬送された。

「そうですねぇ」
「まだ若いんですよね」

やはり大半はもうしばらく内科的治療が続行が望ましいと言う意見。
もちろん私だって「手術した方がいい」と思っているわけではない。
できるだけ内科的治療を継続したい。でも、それには限界があって・・・
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