再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
「そう言えばお前、知り合いだったんだな」
「え?」

「皆川先生だよ」
「ああ」

別に隠していたつもりはない。私自身10日ほど前まで知らなかった。
それに、大きな声で言えるような因縁でもない。

出来ればこれ以上話を膨らませたくない私は、サンドイッチを頬張った。

「指導医だったんだろ?」
それでも、友人である敬は遠慮なく聞いてくる。

「うん、そう」

優秀すぎる指導医と、出来の悪すぎる研修医。

「だから、お前のカメラは似てるんだな」
「・・・」

そんなことはない。
私と皆川先生では雲泥の差。100年たっても足元にもおよばない。

「杉原先生」
ノックもなくドアが開き、白衣の美女が顔だけのぞかせた。

目鼻立ちはパッチリしていて、そんなにちゃんと化粧しているわけないのに吸い込まれるような目力がある。意志の強い大人の女性って印象。

「どうしました?」
慌てて敬が立ち上がる。

「休憩中ごめんなさい。母体搬送、連れて行くわね」

産科は病院の5階。内診室のない救急で診察ってわけにはいかないから、病棟に上がるしかない。

「お願いします」
頭を下げる敬。

ちょっと鼻の下伸びてない?
美人って得ね。

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