再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
「皆川総合病院はお前も知っているだろ?」
「うん」

県境を挟んで隣の県にある総合病院。
私設の病院だけれど、うちと変わらないぐらい規模の大きな総合病院。
隣県とは言え車で一時間もかからないから、患者さんの行き来も多くて紹介状なんかでやり取りすることも多い。

「え、もしかして・・・」

「先生は皆川総合病院の息子だよ」
「へー」

お坊ちゃんだったんだ。

「先生は次男で今はお父さんが病院長。お兄さんが副院長。だから皆川先生は実家の病院と大学病院とうちを行き来出来ているんだ」
「ふーん」

病院はお兄さんが継ぐってことね。

「ちなみに、お母さんは大学病院の精神科部長で、お姉さんの旦那は外科部長って医者一家だ」
「へー」
スゴッ。

家族全員医者って珍しくないけれど、総合病院のお坊ちゃんねえ。
さすがに住む世界が違うって感じ。

「先生の実家のことはうちにスタッフなら誰でも知っているし、皆川先生自身すごく人気があるから、お前も気をつけろよ」
「は?何を気を付けるって言うの」

今更皆川先生とどうこうなろうって気はないし、むしろ避けているくらいなのに。

「お前にその気がなくても、女の嫉妬は怖いぞ」
「わかっているわよ」

怖いのは女の嫉妬だけじゃない。男の妬みもさかうらみだって、人から向けられる悪意はみんな怖い。
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