再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
「なあ、」
「ん?」

ちょうどスタッフがいなくなった休憩室で、敬に呼ばれ振り向いた。
その声にはいつもとは違う憂いがあって、私も敬を見つめてしまった。

「何が、あったんだよ」
「それは・・・」

「お前がうちに来たことに、皆川先生が関係あるのか?」
「いや、それは・・・直接はない」

じゃあ何なんだと敬の視線が言っている。

話した方がいいのかな。
敬には散々お世話になっているんだものね。

フー。
私はサンドイッチをテーブルに置き、一つ息を吐くと敬の方に体を向けた。

「敬は私のことどのくらい知っているの?」
随分漠然とした言い方だけれど、他に聞きようがない。

「そうだなぁ、俺の大学の同期で腕のいい消化器科医。大学卒業後は都内の大学病院で研修医になってそのまま勤務していたが去年病院をやめて、この春副院長の勧めでうちの病院へやってきた」
「まあ、そうね」
随分簡潔だけれど、間違ったところはない。

「あと、俺の知っている環はもっと明るくよく笑う奴だった。ご両親を突然の事故で亡くしたくせにいつも前向きで、トラブルもスランプも笑い飛ばすような強さがあったな。今のお前は何かを怖がっているように見える」

ウッ。
さすが、見抜かれている。
ここまで気づかれていれば話すしかないだろうな。
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