再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
「敬が言うように、私は大学病院で研修になったの。その時の指導医が皆川先生だった」

優しくて腕がいい指導医に恵まれて、自分は幸運なんだと思えた。
もちろん、目標にするには大きすぎて悩んだこともあったけれど、医者としても人としても尊敬できる先生を私は崇拝していた。

今考えれば、当時の私はすごく子供で自分が未熟だってことに気が付いていなかったんだと思う。
他の同期達が付いている指導医みたいに、大声で怒鳴ったり、一方的に仕事を押し付けたり外したりされることもなかったし、基本的にやりたいことをやりたいようにさせてもらった。
チェックを受けるたびに、「ここはこうだからね」「こっちの方がいいかなあ」なんて直されても、先生はそう思うのね。くらいにしか感じていなくて、いつの間にか自分が一人前の医者になった気がしていた。

「もしかして、好きだったのか？」
「ぅん」
敬に嘘は付けなくて、正直にうなずいた。

学生時代は勉強ばかりで恋をすることもなかった私にとって遅い初恋の相手。
それが皆川先生。
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