再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
「ほら、研修医と指導医って常に一緒にいるじゃない。だから、勘違いしたのよ」
自虐的に笑って見せる。

皆川先生はいつも大人で、私が何を言っても受け止めてくれた。相談すれば打開策を示してくれたし、失敗することを予見して何度となく助けてもくれた。
そんな完璧な人に出会ったのは初めてで、私が皆川先生に夢中になるのに時間はかからなかった。

少しずつ仕事も覚え、色々とできることも増え、どんどん生意気な研修医になっていった私。
それでも皆川先生は笑って見ていてくれて、私が困ると助けてくれる。
段々周りが見えなくなっていった私は、「私は皆川先生にとって特別なんだ」と勝手に思い込んだ。

そしてバレンタインデーの日、
「好きです。付き合ってください」
手作りのチョコを渡した私は、自信満々に告白した。

しかし、

「すまない。君の気持ちにはこたえられない」
「えっ?」

なぜだろう、私は断られることを全く想定していなかった。
それから先、皆川先生が何を話したのか記憶はない。
私は先生の前から駆け出し、アパートのベットにもぐりこんだ。
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