再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
それからさらに1時間。
休むことなく合計3例の大腸カメラを終えた私は、やっと椅子に腰を下ろした。

その横で
「皆川先生ー」
内線をとった看護師が、皆川先生を呼ぶ声。

検査着のまま電話をとった先生は、しばらく話をした後、「緊急の胃カメラが来るぞ」とスッタフに向けて声をかけた。

途端にみんながパソコンに向かい患者の情報収集を始める。
カメラの種類も、事前に使う薬も、その量も全て患者によって違うから確認が必要なのだ。

「焦らなくても、とりあえずいつも通りいいからね」
「「はい」」
皆川先生の穏やかな表情に、緊張しかけた空気が緩む。

こういうところが皆川先生らしい。
どんなに緊急事態でも冷静で落ちついているから、側にいると安心できる。
なんだか懐かしい気持ちになりながら、次の検査まで時間が空いた私は少し離れたところからその様子を見ていた。
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