再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
「当時の学部長にね、『今会って全てを話せば和田君は医者を辞めるかも知れないぞ』と言われたんだ。実際君の性格を考えればそうかもしれないと僕も思った」

確かに、皆川先生が責任をとって病院を辞めるってわかっていたら、私は最後まで引き下がらなかっただろう。

「本当は君の側を離れたくはなかった」
「え?」
胸の奥がギュッと締め付けられる感覚。

「君の医者としての未来を守るためには、他に方法がなかった」
「わかっています」

私だっていつまでも子供じゃない。
先生が私のことも思って、色々と手配してくれていたことも知っている。
消化器科の先生たちには「和田君のことをお願いします」と頭を下げてくれていたし、二年目の指導医にも「絶対に逃げ出さないように厳しくお願いします」と直接頼んでくれていた。

「先生のおかげで、今日までやってこれました」
コップを持っていた手を膝に置き、きちんと頭を下げた。

「その割に随分避けられた気がするけれどね」
「・・・すみません」
そこは謝るしかない。
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