再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
最近になって、『鬼だ』と言われる皆川先生に少し慣れた。
厳しいとは言っても間違ったことを言っているわけではないし、最低限の礼節を守っていれば怒られることはない。
むしろ今どきの研修医たちの言動の方に問題があるように感じる。

「和田先生顔色悪いですけれど、大丈夫ですか?」
カメラの準備を終えた塙くんが私の顔を覗く。

「大丈夫、ちょっと疲れただけだから」

発熱外来の開設により、救急を受診する患者が増えた。
その分医師の補充も必要になって、救急への応援回数が増えることになった。

「昨日当直だったんですよね?」
「うん」

昨夜は救急からの呼び出しが何度かありほとんど仮眠をとることができなかった。
そのせいではないけれど、朝から頭が重くて体がだるい。

「少し休みますか?」
「バカね、患者さんが待っているのよ」
「しかし・・・」
「大丈夫、仕事はちゃんとできるから」
「そういう意味で言ったわけではなくて」
食ってかかろうとする塙くんを
「ほら、始めるわよ」
私は振り切るようにして検査室へ向かった。
< 66 / 200 >

この作品をシェア

pagetop