再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
「立てますか?」
「うん」

塙くんに支えられなんとか立ち上がって、
フー。
大きく息を吐いた時、

クラッ。
また体がぐらついた。

「ごめん」
一人では立っていられなくて塙くんに寄り掛かってしまったことを、謝った。

「何言っているんですか」
「うん、でも・・・」

検査室では患者さんが待っているのに、私がしっかりしなければいけないのに。

「とにかく座りましょう」

塙くんに抱えられるように椅子へと座らされ、我慢できずに机に突っ伏した。
目を閉じていると幾分いいけれど、開ければ景色がぐるぐると回って吐き気もする。
これじゃあ仕事にならない。

「誰か呼びますよ」
「ダメ、待って」

みんな忙しいんだから、迷惑はかけられない。何とか自分で・・・

「何してる」
聞こえてきた鋭い声。

ああ、最悪。
この声は皆川先生。それもかなり不機嫌な時の声。

足音がして、近ずく気配があって、私の前に立ち止った人影。

「ったく」
呆れたようなつぶやきが聞こえた。

めまいと吐き気と倦怠感に加えて精神的な動揺まで加わって、私の体は限界を迎えたらしい。
フゥーッと遠のく意識の中、誰かに抱きあげられた浮遊感を感じた。
< 68 / 200 >

この作品をシェア

pagetop