再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
次に目を開けた時、見えたのは真っ白な天井と飾り気のない蛍光灯。
ゆっくり周囲に目をやると、点滴スタンドとベットを仕切るカーテン。
どうやらここは救急外来のベットらしい。

普段、一日何度も訪れていて自分の部屋よりも見慣れた場所なのに、こうして患者としてベットに寝てみると景色が違う。
ベットは固いし、苦しそうに唸る患者の声も時々聞こえて不安な気持ちを掻き立てられる。

「お、気が付いたな?」
「あぁ、敬」

カーテンを開け顔を出した敬が私を見ている。

「まだめまいがするか?」
「うぅん、平気」
体のだるさは残っているけれど、頭痛もめまいもすっかり消えた。

「点滴があと30分くらいだから、もう少し寝てろ」

脈を診たり聴診器を当てたり、すっかり医者の顔になった敬が診察しながら指示を出すけれど、仕事を投げ出してきた私はゆっくりと寝ているわけにはいかない。

「大丈夫、もう平気だから抜いて」
「ダメ」
「え、何で?私も仕事があるのよ。行かないと」

きっと他の先生が私の分のカメラもやってくれているはずだから、早く戻らないと。

「今日はこのまま帰るんだ」

はあ?冗談でしょ。

「いいから、早く点滴を抜いて」
「ダーメ」

どうやら敬は本気らしい。
困ったな。もちろん自分で抜針するのは簡単なことだけれど、敬がこのまま仕事に戻らせてくれるとは思えない。
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