再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
「いつも冷静沈着な皆川先生が血相変えて連れてきた」

なんだか楽しそうに、敬がニコニコしている。

「皆川先生のあんな切羽詰まった顔初めて見たよ」

それはさぞかしいい見物だったでしょうねと言いたいけれど、自分のこととなればそうも言っていられない。
できるだけ波風立てづ静かにしていたいのに、しばらくは噂の的になりそうだ。

「連れてきてしばらくはお前の側に付き添っていたんだぞ」
「ふーん」
「でも、先生がいないと内視鏡が回らないって呼び出されて戻っていった」
「そう」

今日の下部は時間のかかりそうな大腸カメラが入っていたから皆川先生がいないと検査室も困ったことだろう。

「気が付いたって連絡したから、検査が終わり次第来るだろう」
「うん」

随分迷惑をかけたから、ちゃんとお礼を言わないと。
それに、

「私がする予定だったカメラは?」
塙くん一人ではこなせないはずだけど。

「消化器部長が降りてきた」
「えぇー」
最悪。

これでまた嫌味を言われてしまう。

「仕方ないだろ。体が一番だ」

それはそうだけれど・・・
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