再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
「そもそも、医者が自己管理もできないでは話にならないだろう」

いつの間にか近くの椅子に座り文句を言い続ける皆川先生に、私はだんだん腹が立ってきた。

「しっかり治らないようなら明日も休みなさい」
「無茶言わないでください」

明日は外来の予定だし、病棟にも気になる患者がいて休むことなんてできない。

「検査室で倒れるような状態で仕事をする方がよっぽど無茶だろう」
「ですから、すみませんっ」
さっきから何度も謝っているじゃないですかとの思いもあり、思いきり反抗的に言い返してしまった。

「何だよその態度」
「先生がしつこいからです」
「僕のせい?」
「それは・・・」

悪いのは私。そんなことはわかっている。でも、

「とにかく明日は休みなさい」
「無理です」

みんなギリギリのシフトで勤務しているのに、これ以上のわがままは言えない。

「部長には僕が言っておくから」
「もー、勝手な事しないでっ」
とうとう叫んでしまった。

「どうしました?」
声を聞きつけた看護師が駆け寄ってきた。

「すみません、何でもありません」

あーあ、これでまた噂の種が増えてしまった。
一人落ち込んでいる私の横で、

「片づけが終わったら送って行くから」
何食わぬ顔で言う皆川先生が憎らしい。

このまま逃げて帰ろうかと本気で思ったけれど、さすがに後が怖くてやめた。
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