再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
待つこと30分。
迎えに来てくれた皆川先生は、当然のように私の荷物を持ち病院を出てしまった。
私は数歩後ろからその後をついて歩いた。


「あの、自分で帰れます。車もあるし」
駐車場まで行き、周りに人がいなくなったころでやっと声をかけた。

車を置いて帰ればまたここまで取りに来なくてはいけなくなって逆に不便だから、出来れば乗って帰りたい。

「めまいが落ち着いたばかりだろ?今日は運転しない方がいい」
「でも、」

ここは田舎で、車がなければどこにも行けないのに。

「明後日の朝迎えに行ってあげるから、置いて帰りなさい」
「いや、でも」

「車がなければ大人しくしているしかないだろうから、ちょうどいいよ」
「先生、酷い」

どうやら本気で明日は休まされるらしい。
この様子だと副院長の耳にも入っているだろうから、私は家から出られそうにない。

はぁー。
無意識にため息が出た。

皆川先生の気遣いが不満なわけではない。心配をしてもらうことはありがたいと思う。
でも、現実問題として患者も仕事も溜まる一方で自分の首が締まるだけ。そう思うと這ってでも仕事に行った方が気が楽だ。

「こら、危ないっ」
考え事をしていたら急に腕を引かれた。
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