再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
「鎮静剤が効くまで待ち時間が出てその分検査の時間は長くなったし、患者だってよけいに辛い思いをしたんだ。そのことがわかっているのか?」
「すみません」

じっと床を見つめながら、小さな声で謝る塙くん。

「僕だったら、あの患者に痛み止めなしでの検査は勧めない」

確かに、私でも勧めないだろう。

「和田先生、君にもそのくらいはわかったはずだろう?」
「えっ?」
私ですか?

いきなり矛先が向いて、今度は私が固まった。

「患者の状態を考えればこうなるのはわかったはずだろう?」

でも、私は確認も忠告もした。
その上で、本人の希望って聞いたから・・・

「悪いのは和田先生ではありません」
それまで下を向いていた塙くんが顔を上げた。

「和田先生、どうなの?」
塙くんのことは見ることもなく、皆川先生はまっすぐに私を見る。

「それは、その・・・」

患者の病状を考えれば、想定できる結果だった。
もう少し強く、止めるべきだったのかもしれない。

「待って下さい。責任は僕にあります。和田先生は」
「違うよ。塙先生、君は研修医だ。指導される立場で、その責任は指導する医師にある。今回の検査の担当医は和田先生だった。和田先生、そうだろ?」
「・・・はい」
反論なんてできるはずもなく、私は頷いた。
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