再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司

「たった数ヶ月一緒にいるだけだけれど、子供のいない私と家内は環ちゃんを娘のように思っているんだ。だから、何かあればすぐに言うんだよ」
「はい」
運転のためまっすぐに前を向いたまま、私は返事だけをした。

内視鏡室で倒れて救急に運ばれてそのことで噂の的になっている私を、きっと心配してくださったのだろう。

「環ちゃんもいつかは結婚するんだろうし、新太君はくんは私も子供の頃から知っていて良い若者だと思うが」
「やめてください、今は仕事で精一杯で他のことは考えられませんから」
副院長の妄想を止めるために声が大きくなった。

「そうかい？」
ジッと横から見られている視線を感じる。

そりゃあいつかは恋をして結婚をして家庭を持ちたい。
でも、今はまだそんな余裕はない。

「実は、環ちゃんに１つお願いがあるんだが」
「お願いですか？」
「うん」

こう改まって言われると、怖いな。
皆川先生のことを前振りされた後だから、余計に警戒してしまう。

「環ちゃん、お見合いをしてみないか？」
「はあ？」

一瞬ポカンとして、次に助手席の副院長を見た。