再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
数日後の昼休み。
昼食の後時間を持て余した私は、内視鏡室で溜まった雑務をこなそうと顔を出した。

「和田先生どうしたんですか?」
予定外の登場に、スタッフからも声をかけられる。

「うん、午後の外来まで時間があるから顔を出しただけ」
間違っても人の邪魔をするつもりはない。

ちなみに今日の内視鏡は、胃カメラなどの上部は上田先生が、大腸カメラなどの下部を皆川先生が担当。
何人かサポートの先生もいるし、研修医も数人入るけれど、同時進行で複数の検査が行われるからみんな忙しそうにバタバタしている。

そんな中、私は控室の一番奥の端末を立ち上げてカルテ整理や診断書の作成を始めた。
医者は診察をして検査や手術などをするのが仕事のすべてだと思われがちだけれど、実際にはカルテの記載や書類の作成などの事務作業に取られる時間がすごく多くて、こうやって上手に時間を作らなければ仕事は終わらない。
珍しくできた時間だからこそ、黙々と作業をこなしていると、

「待って、そこ違うよ」
皆川先生の声が聞こえてきた。
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