再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
気になった私はカーテンの隙間からそっと中を覗いた。
今入っている検査は治療も兼ねたもので、時間もかかる。そのため患者には麻酔がかけられていて、こっちの声は聞こえない。

「先生、違うよそっちじゃない」
「はい」
「ああ、そこはゆっくり」

自らカメラを操作しながら、サポートで入っている研修医に指示を出す皆川先生。

「そこもう少し引いて」
「は、はい」

「あ、ストップ。行き過ぎた」
「すみません」

研修医も必死について行くけれど、残念ながら技術が伴わない。
もちろん、いざとなれば皆川先生一人でも検査はできるんだろうけれど、それでは時間がかかりすぎる。
大変そうだなと見ていると、

「和田先生、見ているんなら手伝って」
いきなり、声がかかった。

え、私?
思わず自分を指さす。

「ちょっと苦戦しているんだ、手伝ってくれ」

好奇心なんて出して覗くんじゃなかった。
それでも、「手伝ってくれ」と声がかかった以上は逃げ出すこともできない。
仕方ないな。

私は急いで検査着を身につけ、検査室へと入った。
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