再会したのは、二度と会わないと誓った初恋の上司
「女医なんて、絶対にモテませんよ」
「そうですか?」
「ええ。飲み会の席で『医者です』って言った瞬間、それまで盛り上がっていた話が健康相談に代わるんですよ。いきなり、『最近動悸がする』だの『時々胃が痛む』だの言われても、知らないし」
「ハハハ、そうですね」

酔っぱらってしまった私が女医のあるあるを語り始めると周りに座っていた男性スタッフは楽しそうに笑った。

「でも、俺たちは和田先生のこと素敵だと思って見てますよ」
「もう、やめてください」

真顔で面と向かって恥ずかしいことを言われ、またビールを流し込む。
こんなことをしていると酔いつぶれる。というか、すべに限界まで飲んでいる気がするなと思いながらビールに逃げた。

「おや、和田先生。イケメンに囲まれてますね」

ああ最悪。
今度は部長が現れ、当然のように新しいジョッキが私の前に置かれる。
仕方なく、私は新しいビールに口を付けた。

マズイ、本当にマズイ。
このままじゃあマズイ。

それでも、部長もスタッフ達もお酒をすすめてくるし、少しずつでも口をつけるしかなくて、私はビールを飲み続けていった。
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