エリート脳外科医は契約妻を甘く溶かしてじっくり攻める
 お腹に違和感を覚えたのはいつからだったか。
 今では頻繁だから、もうはっきりとは覚えていない。

 昨日はあの後両親が戻ってきて、木南先生から説明を受けていた、とりあえず症状も落ち着いていたから緊急性はないだろうとなって、両親は帰宅していった。

 両親は自分たちが医師であるため、ある程度の知識があるからわりと冷静に思えた。
 おそらく、私が運ばれた病院には文くんがいるというのもあって安心したのもある気がする。

 そうして病院でひと晩明かした私は今日、問診やら検査やらで退院まで昼頃まで掛かった。

 ひと通り検査を終えて、病室に戻った後はしばらくぼんやりしていた。

 十数分後、看護師に声を掛けられて我に返った私は、慌てて退院の準備を終えた。

 腕時計を見ると、十二時半前。
 文くんとの約束の時間まであと十五分くらい。待ち合わせ場所はロビー。

 私は昨日買い物に出掛けた時の小さなバッグひとつ持って、病室を出た。

 瞬間、目の前に人がいて思わず声を上げる。

「わっ」
「ごめん!」

 目を見開いて顔を上げると、初めて会う男性ドクターだった。

 見た感じから、年齢は文くんと同じくらい。文くんとはジャンルの違うイケメンだ。
 なんていうか……モテそうだけど、ちょっとだけ軽そうな……。

 初対面の相手にそんなことを思うなんて失礼だ、と頭を切り替え、ひとこと尋ねる。
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