エリート脳外科医は契約妻を甘く溶かしてじっくり攻める
堪らず声を上げてしまったタイミングで、さっき頼んでいたドリンクが運ばれてくる。私は激しい心音を感じつつ、両手で口を覆った。
店員が丁寧にカップを置いて、一礼して下がった後で母がカップを手にして口を開いた。
「うちは澪に任せるわ。もう自立してもいい歳だし。ただ、ずっと実家暮らしの子だから、文くんの足手纏いにならないかだけ心配だわ。家事ができるのは救いね」
「ミイちゃんは散財するタイプじゃないでしょ? 文尚も長らくひとり暮らししてるし、その辺は心配ないわよ。あと、別に家事をやってもらいたくてミイちゃんに一緒に住む提案をしたわけじゃないから。誤解しないでね?」
「えっ……と」
ふたりの視線が一斉にこちらに向けられ、頭の中はパニックだ。
私の母と由里子さんは似た者同士で、よくも悪くも勢いがあってパワフルなタイプ。
そんなふたりがタッグを組めば、私なんて到底太刀打ちできない。
無言の圧力に気おされ、頭が回らず視線を泳がせる。何度か口をパクパク動かして、声を絞り出した。
「ふ、文くんの意見を尊重します……」
「文尚なんて仕事の虫なんだから、返事もいつになるかわかんないわよ。あのまま行ったら一生独り身かあって思ってたんだから。ミイちゃんがうちの息子でいいならもう結婚しちゃってほしいくらい」
由里子さんはうんざりした様子でコーヒーを口に含む。
「すごくわかるわ。澪も放っておいたら家から一歩も出ないんだから。ちょっと心配だったのよね。若いって言ってもすぐに年は取るし、それこそ一生ひとりでデスクにかじりついてるのかなって想像して。それは努も同意してたわ」
今度は母までもが今の私に対する思いを吐露し始め、胸騒ぎがする。
次の瞬間。
「澪。もういっそのこと結婚前提で話進めてもらう?」
母の突飛な発言に、さすがに私も唖然として固まった。
「なっ……お母さん、なに言って」
「奇遇ねえ。今まさに私も同じこと言おうとしてたの」
信じられないことに、由里子さんまで同調する。
私は艶やかな赤い唇に弧を描く由里子さんを凝視して、なにも言えなくなっていた。
店員が丁寧にカップを置いて、一礼して下がった後で母がカップを手にして口を開いた。
「うちは澪に任せるわ。もう自立してもいい歳だし。ただ、ずっと実家暮らしの子だから、文くんの足手纏いにならないかだけ心配だわ。家事ができるのは救いね」
「ミイちゃんは散財するタイプじゃないでしょ? 文尚も長らくひとり暮らししてるし、その辺は心配ないわよ。あと、別に家事をやってもらいたくてミイちゃんに一緒に住む提案をしたわけじゃないから。誤解しないでね?」
「えっ……と」
ふたりの視線が一斉にこちらに向けられ、頭の中はパニックだ。
私の母と由里子さんは似た者同士で、よくも悪くも勢いがあってパワフルなタイプ。
そんなふたりがタッグを組めば、私なんて到底太刀打ちできない。
無言の圧力に気おされ、頭が回らず視線を泳がせる。何度か口をパクパク動かして、声を絞り出した。
「ふ、文くんの意見を尊重します……」
「文尚なんて仕事の虫なんだから、返事もいつになるかわかんないわよ。あのまま行ったら一生独り身かあって思ってたんだから。ミイちゃんがうちの息子でいいならもう結婚しちゃってほしいくらい」
由里子さんはうんざりした様子でコーヒーを口に含む。
「すごくわかるわ。澪も放っておいたら家から一歩も出ないんだから。ちょっと心配だったのよね。若いって言ってもすぐに年は取るし、それこそ一生ひとりでデスクにかじりついてるのかなって想像して。それは努も同意してたわ」
今度は母までもが今の私に対する思いを吐露し始め、胸騒ぎがする。
次の瞬間。
「澪。もういっそのこと結婚前提で話進めてもらう?」
母の突飛な発言に、さすがに私も唖然として固まった。
「なっ……お母さん、なに言って」
「奇遇ねえ。今まさに私も同じこと言おうとしてたの」
信じられないことに、由里子さんまで同調する。
私は艶やかな赤い唇に弧を描く由里子さんを凝視して、なにも言えなくなっていた。