エリート脳外科医は契約妻を甘く溶かしてじっくり攻める
私は部屋を出てキッチンへ向かう。そして、コーヒーを淹れる準備を始めた。
コーヒーグッズは母の承諾得て家から持ってきた。どのみち、母は使いこなせないはずだから問題はなかった。
お湯を沸かし、自分の分だけコーヒーを淹れる。なんとなく、部屋じゃなくてリビングにいたくて、ソファに座ってコーヒーを飲んでいた。
すると玄関の方から音がしたため、足を向けた。
「文くん……?」
玄関で靴を脱ぐ文くんの様子が明らかに気怠げで心配になる。
彼は私の呼びかけでこちらに気づいたらしく、ゆっくり頭を上げた。
「ミイ。まだ起きてたの?」
「うん。もう少ししたら寝ようと思ってて……大丈夫?」
声もいつもより張りがなくて、疲れているのがはっきりとわかる。
文くんは二度小さく頷いて、重そうな身体でリビングへ入るなりソファにドサッと座った。
そうだよね。昨日の朝に出て行って、帰ってきたのが翌日のもう日付越えるかどうかだもん。隙間時間で仮眠をとっているとはいえ、長時間拘束されていたらいくら体力ありそうな男の人でもフラフラになるよ。
瞼を下ろしたまま天井を仰ぐ文くんを見つめ、ぽつりと尋ねる。
「なんか食べてきた? よかったら夕食あるよ。疲れてると食欲落ちるけど、できれば少しは口に入れた方が……」
それから寝るのが一番いい気がするけど、疲れてる時ってとにかく眠かったりするよね。
余計なお世話だったかもと口を噤むと、文くんは目を閉じたまま言った。
「意外だな」
「え?」
「きっちりした食生活。偏見って言われたらそうなんだけど……在宅ワーク、それも執筆業の人って、生活サイクルや食生活が崩れがちなイメージがあるから。でもミイは規則正しく食べてる」
ようやく露わになった瞳は柔らかくて、私はこんな時にもかかわらずドキリとする。
「あっ、なんとなくわかる。不規則な生活になるイメージあるよね」
さっき思ったけど、ちょっと怠そうにしてる文くんって、顔の角度なのか視線の伏せ方なのかやたらと色っぽい。
私は目のやり場に困って泳がせながら、早口で続ける。
「うちはお母さんが小児科の看護師だし、栄養の取り方とか結構こだわってたと思うの。だから私も自然とね。食事のリズムがちゃんとしてたら、自然と生活も整うっていうか。あ! もちろん、いろんな職種の人がいるし、文くんみたいにどうしても難しいって人がいるのも理解してるよ」
立て板に水のごとく話した私を見て、文くんはきょとんとしていた。
疲れている時に長話を聞かせるなんてと反省していた矢先、クスッと笑い声がする。
「うん。じゃあせっかくだし、ごちそうになろうかな」
文くんに微笑まれ、眠気も吹き飛ぶ。
「わかった。用意にちょっとだけ時間かかるから、お風呂入ってきたらいいかも」
「じゃ、そうする」
文くんがゆっくり腰を上げ、私を優しい顔で見下ろした。
「ミイ、ありがとな」
目尻に皺を作って、くしゃくしゃと頭を撫でられる。
コーヒーグッズは母の承諾得て家から持ってきた。どのみち、母は使いこなせないはずだから問題はなかった。
お湯を沸かし、自分の分だけコーヒーを淹れる。なんとなく、部屋じゃなくてリビングにいたくて、ソファに座ってコーヒーを飲んでいた。
すると玄関の方から音がしたため、足を向けた。
「文くん……?」
玄関で靴を脱ぐ文くんの様子が明らかに気怠げで心配になる。
彼は私の呼びかけでこちらに気づいたらしく、ゆっくり頭を上げた。
「ミイ。まだ起きてたの?」
「うん。もう少ししたら寝ようと思ってて……大丈夫?」
声もいつもより張りがなくて、疲れているのがはっきりとわかる。
文くんは二度小さく頷いて、重そうな身体でリビングへ入るなりソファにドサッと座った。
そうだよね。昨日の朝に出て行って、帰ってきたのが翌日のもう日付越えるかどうかだもん。隙間時間で仮眠をとっているとはいえ、長時間拘束されていたらいくら体力ありそうな男の人でもフラフラになるよ。
瞼を下ろしたまま天井を仰ぐ文くんを見つめ、ぽつりと尋ねる。
「なんか食べてきた? よかったら夕食あるよ。疲れてると食欲落ちるけど、できれば少しは口に入れた方が……」
それから寝るのが一番いい気がするけど、疲れてる時ってとにかく眠かったりするよね。
余計なお世話だったかもと口を噤むと、文くんは目を閉じたまま言った。
「意外だな」
「え?」
「きっちりした食生活。偏見って言われたらそうなんだけど……在宅ワーク、それも執筆業の人って、生活サイクルや食生活が崩れがちなイメージがあるから。でもミイは規則正しく食べてる」
ようやく露わになった瞳は柔らかくて、私はこんな時にもかかわらずドキリとする。
「あっ、なんとなくわかる。不規則な生活になるイメージあるよね」
さっき思ったけど、ちょっと怠そうにしてる文くんって、顔の角度なのか視線の伏せ方なのかやたらと色っぽい。
私は目のやり場に困って泳がせながら、早口で続ける。
「うちはお母さんが小児科の看護師だし、栄養の取り方とか結構こだわってたと思うの。だから私も自然とね。食事のリズムがちゃんとしてたら、自然と生活も整うっていうか。あ! もちろん、いろんな職種の人がいるし、文くんみたいにどうしても難しいって人がいるのも理解してるよ」
立て板に水のごとく話した私を見て、文くんはきょとんとしていた。
疲れている時に長話を聞かせるなんてと反省していた矢先、クスッと笑い声がする。
「うん。じゃあせっかくだし、ごちそうになろうかな」
文くんに微笑まれ、眠気も吹き飛ぶ。
「わかった。用意にちょっとだけ時間かかるから、お風呂入ってきたらいいかも」
「じゃ、そうする」
文くんがゆっくり腰を上げ、私を優しい顔で見下ろした。
「ミイ、ありがとな」
目尻に皺を作って、くしゃくしゃと頭を撫でられる。