エリート脳外科医は契約妻を甘く溶かしてじっくり攻める
3.ずっと意識してほしいと思ってた
 あれからなんとなく一方的に気まずくて、文くんとはゆっくり顔を合わせていない。

 もっとも、彼は本当に忙しそうだから避けなくとも同じ結果だとは思うけれど。

「はあ」

 重苦しいため息の痕、執筆の手を止める。心なしか、またお腹が痛い。

 どうしよう。この状況で私はどうしたらいいんだろう。

 何事もなかったように振る舞うのが一番とは思うものの、あの日私がちょっと変だったのは文くんも察してるはずだし、下手したら泣きそうになったのも気付かれているかもしれない。

 恥ずかしすぎる……。もしや私の気持ちも勘付いてしまったんじゃ……。

 青褪めたり赤くなったりと忙しくしていると、インターホンの音が聞こえた。

 ほぼ百パーセント私の来客ではないのはわかる。しかし、荷物の受け取りなら私が文くんの代わりにしてあげられるから、いつもちゃんと確認はしていた。

 急いでリビングへ移動してモニターを確認すると、予想外の来客に驚いた。
 戸惑うも、私は通話ボタンで応答する。

「はっ、はい」
《あっ、よかった~。ミイちゃんいた~》

 訪問客は文くんの姉の真美ちゃんだ。

「えっと、文くんはいないけど……とりあえず開けるね」
《うん、文尚は別にいいの。ミイちゃんに会いに来ただけだから》

 そうして私はオートロックを解錠し、あたふたしながら真美ちゃんが来るのを待った。

 数分後、玄関前のインターホンが鳴る。私は玄関へ急ぎ、ドアを開けた。

「ミイちゃん、久しぶり~。元気だった?」
「真美ちゃん、びっくりした」
「会ったのは文尚の帰国パーティー以来だから……まあ二カ月ちょっと前か。でもあの日、私遅くなってゆっくり話せなかったもんね。上がってもいい?」

 私は「どうぞ」と言いつつ、本来自分の立場で言うことじゃないなと違和感を抱く。

 でも、きっと真美ちゃんの耳にも私と文くんは恋人関係になったと情報が入っているはずだし、ここは堂々とした演技しなきゃ。

 彼女はリビングへ入ると、窓際から景色を眺めたのちにソファに座った。

 真美ちゃんとも昔からの付き合いだし、こんなに緊張する間柄じゃないのに。
 やっぱり会うのに慣れない場所といろんな状況が掛け合わさって平常心ではいられない。

 さっきまで、真美ちゃんが家に来たらまず飲み物を……と考えていたのに、すっかり忘れてしまっていた。

 私はただ、リビングで手持ちぶさたになって立ち竦む。そんな私に、真美ちゃんは直球で話題を振ってきた。
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