エリート脳外科医は契約妻を甘く溶かしてじっくり攻める
 俺の取った行動は澪にとってはやっぱり迷惑だったのか。
 それに、姉がさりげなく言っていた。

 結婚相手を紹介するのは、俺だけではなく澪にもしようと思ってる、と。

 俺にあれだけの人数を一方的に紹介してくる姉だ。澪にも同じようにしているに決まっている。

 そう思ってモヤモヤした日々を送っていたところに、澪の仕事に関わる人たちに会った。
 その中には俺と同じくらいの男もいたのがやけに気になって仕方がなかった。

 それもこれも、姉が余計なことを言うから。そのせいで、俺も変に意識しすぎていると思っていた。

 ……けど、このどうしようもない嫉妬心は本当に一過性のものなのか。姉に刺激されたために錯覚を起こしている?
 ……違うだろ。いい兄ぶってないで、認めろ。

 一緒に暮らし始めてから、ミイを……澪をこれまでとは違う目で見てしまっていることを。

 そんな葛藤の末に、俺は日もすっかり沈んで暗い中、彼女を見つけ出した。

 安堵するや否や、委縮する彼女を気遣う余裕もないほど感情を露わにして、突然出て行ったことを責め立てた。

 これじゃいけないと態勢を立て直そうとした矢先、彼女の口から『好きな人ができた』と言われ、理性が飛んだ。

 時々彼女の言動は、俺が特別なのではと思わされてきた。
 俺は自分で思うよりもずっと、自惚れていたのだと察した。

 つい取り乱したものの、結果的に俺は彼女を捕まえることができてほっとした。

 そしてふたりでマンションへ戻る間に、彼女はふいに『文くん、ごめんなさい』と謝ってきた。

 互いに気持ちを確認した後の謝罪の言葉は、もしかしてさっき俺へ告げてくれた想いを打ち消す意味と同義かと思い、心底焦った。でも、詳細は違った。

 彼女はその後、とても言いづらそうに俯きがちになって『スマホの画面を見てしまいました』と続けたのだ。

 その告白に俺はまったく動じなかった。
 動じる理由がなにもなかったから。

 不思議に思ってもう少し詳しく聞いてみると、なにやらマッチングアプリのメッセージ受信が数件きていたと説明された。
 同時に「はあ?」と声を漏らしてしまった。

 一切心当たりがなく狐につままれた気持ちでいたが、はっと思い出す。
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