エリート脳外科医は契約妻を甘く溶かしてじっくり攻める
「はー。しつこいな」
ダイニングチェアに座り、思わずため息交じりに愚痴を零した。
「どうかした?」
正面に座る澪を見て、一拍置いてから切り出す。
「実は折り入って相談があるんだけど」
「ん? なに?」
神妙な面持ちに変わった彼女に、スッとスマートフォンを差し出した。
澪はクリッとした瞳に困惑の色を浮かべ、おずおずとスマートフォンを受け取る。
「そいつが例のアプリ入れた張本人。俺と同い年で独身なのもあって、そういうノリで声をかけてくることがしばしば……良かれと思ってお節介妬いてくれてるのはわかるんだけど」
ジーッと文面を見ている彼女に本題を告げる。
「結婚したこと、職場で公にしてもいい?」
「えっ?」
途端に彼女はスマートフォンからこちらに顔を向け、目を丸くした。
「いや……本当はあえて触れ回ることでもないし、わざわざ公言するつもりはないと思ってるんだ。少なからず天花寺の妻って名前だけで周りの興味はミイに向いてしまうだろうから。だけどそれ以上に……なんていうか無闇にミイを傷つけたくなくて」
逆の立場になって考えたら、やっぱり不安はゼロにはならないし、内心面白くない。
俺は澪と籍を入れて事務には届け出たものの、周囲には特に話していなかった。
きっかけは互いの縁談回避。
澪の方は俺が春菜さんに挨拶した時点で時間稼ぎはできて目的達成していた。が、俺の方は特段変わりなかった。
なんだか彼女を盾にして見合いなどの話を断るのが気が引けてしまって。
澪を利用したくはない。けれど、彼女を不安にもさせたくない。
そうかといって、結婚したと明かせば、彼女が色々と探られる立場になると思えば決断できずにいた。
初めて抱えていた悩みを打ち明け、彼女の反応はというと……。
「いいよ。全然いい。この間まで私が文くんを利用させてもらってた分、文くんも私を好きに利用して」
予想外にも、キラキラした表情を見せて前のめりになっている。
拍子抜けしつつ、彼女の言葉に毅然と返す。
「俺は利用するつもりで言ってるわけじゃない」
「あ、うん。ごめん。わかってる。ただ、私でも役立てるのかと思ったらうれしくて。結婚の事実があるから、こういう誘いもきっぱり断る理由もできて、気が楽になるのかな?って」
「まあ、気が楽なるのは否定はしない。でも本当、そんなものは二の次で俺は」
「うん」
俺の心配はよそに、澪は極上の笑みを浮かべて瞳を輝かせて言った。
「ありがとう。私を優先して考えてくれてるのがすごくうれしい」
面映ゆそうに目尻を下げて、頬を桜色に染める彼女に目を奪われる。
すっかり魅了されている間にも、彼女は「それに」と続ける。
「私、本当に文くんと結婚したんだよね。まだ夢みたいだったけど、今の話聞いたらちょっとだけ実感した」
小さな両手で口元を覆い、幸せを噛みしめるように笑って言った。
ダイニングチェアに座り、思わずため息交じりに愚痴を零した。
「どうかした?」
正面に座る澪を見て、一拍置いてから切り出す。
「実は折り入って相談があるんだけど」
「ん? なに?」
神妙な面持ちに変わった彼女に、スッとスマートフォンを差し出した。
澪はクリッとした瞳に困惑の色を浮かべ、おずおずとスマートフォンを受け取る。
「そいつが例のアプリ入れた張本人。俺と同い年で独身なのもあって、そういうノリで声をかけてくることがしばしば……良かれと思ってお節介妬いてくれてるのはわかるんだけど」
ジーッと文面を見ている彼女に本題を告げる。
「結婚したこと、職場で公にしてもいい?」
「えっ?」
途端に彼女はスマートフォンからこちらに顔を向け、目を丸くした。
「いや……本当はあえて触れ回ることでもないし、わざわざ公言するつもりはないと思ってるんだ。少なからず天花寺の妻って名前だけで周りの興味はミイに向いてしまうだろうから。だけどそれ以上に……なんていうか無闇にミイを傷つけたくなくて」
逆の立場になって考えたら、やっぱり不安はゼロにはならないし、内心面白くない。
俺は澪と籍を入れて事務には届け出たものの、周囲には特に話していなかった。
きっかけは互いの縁談回避。
澪の方は俺が春菜さんに挨拶した時点で時間稼ぎはできて目的達成していた。が、俺の方は特段変わりなかった。
なんだか彼女を盾にして見合いなどの話を断るのが気が引けてしまって。
澪を利用したくはない。けれど、彼女を不安にもさせたくない。
そうかといって、結婚したと明かせば、彼女が色々と探られる立場になると思えば決断できずにいた。
初めて抱えていた悩みを打ち明け、彼女の反応はというと……。
「いいよ。全然いい。この間まで私が文くんを利用させてもらってた分、文くんも私を好きに利用して」
予想外にも、キラキラした表情を見せて前のめりになっている。
拍子抜けしつつ、彼女の言葉に毅然と返す。
「俺は利用するつもりで言ってるわけじゃない」
「あ、うん。ごめん。わかってる。ただ、私でも役立てるのかと思ったらうれしくて。結婚の事実があるから、こういう誘いもきっぱり断る理由もできて、気が楽になるのかな?って」
「まあ、気が楽なるのは否定はしない。でも本当、そんなものは二の次で俺は」
「うん」
俺の心配はよそに、澪は極上の笑みを浮かべて瞳を輝かせて言った。
「ありがとう。私を優先して考えてくれてるのがすごくうれしい」
面映ゆそうに目尻を下げて、頬を桜色に染める彼女に目を奪われる。
すっかり魅了されている間にも、彼女は「それに」と続ける。
「私、本当に文くんと結婚したんだよね。まだ夢みたいだったけど、今の話聞いたらちょっとだけ実感した」
小さな両手で口元を覆い、幸せを噛みしめるように笑って言った。