エリート脳外科医は契約妻を甘く溶かしてじっくり攻める
5.また来年も
「今もまだ信じられない時あるわあ。まさか、澪と文くんがって」
「ねー。ふと考えるたびに顔がにやけるわ」
母と由里子さんの会話を耳に入れ、気恥ずかしい思いで静かにコーヒーを飲む。
水曜日の午後。
私は文くんの実家で母と由里子さんと一緒にお茶をしていた。
父のクリニックは水曜午後は休診。由里子さんはシフト制で、今日は休みだったため声が掛かった。
わりとこういう機会はちょくちょくあるものの、私まで誘われるのはそう多くはなかったのに最近はよく呼ばれる気がする。
それというのも……。
「で?」
「結婚式はいつするの?」
この手の話題をするためだ。
実のところ、私はまだ胸中複雑……というか、まだ実感がなくて自分自身現状に気持ちが追いついていない部分がある。だから、結婚式とか言われてもどこか他人事。
「え? うーん……どうなんだろう。っていうか、しないかも……?」
「だめよ! ちゃんと晴れ姿を残しておかなきゃ!」
「そうねえ。本音を言えば、うちは澪しかいないわけだから。人生で一度きり、親として結婚式に出てみたいところねえ」
たじろぎながら答えると、由里子さんが即否定し、熱弁をふるう。それに続いて母までもが間接的に急かしてきた。
結婚式か……。
そういえば結城さんは、自分の年齢もそう若い方ではないし資金も掛かるからと結婚式はしないって言ってたな。
わりと今の時代はしない人も一定数いるようだけど……。自分のこととなると……。
結婚式を挙げたいってあまり想像したことがないかもしれない。それって、めずらしいだろうか。
私はただ長年密かに文くんを想っていただけで、年齢を重ねるにつれ、望みが叶う可能性は低いと思い込んできた。
あ、だけど幼少期の頃なら、薄っすらと『花嫁さん』に憧れていた時期はあったような気もする。
大人になった今、きちんと考えてみたら――私はどうしたいのかな。
正直言えば、どっちでもいい。彼と一緒にいられる今が十分幸せで、他にはなにもいらないかなって思ってしまう。
けれども、今みたいに親の気持ちを聞くと……。
色々と考えあぐねている間にも、母たちの会話は進んでいく。
「ねー。ふと考えるたびに顔がにやけるわ」
母と由里子さんの会話を耳に入れ、気恥ずかしい思いで静かにコーヒーを飲む。
水曜日の午後。
私は文くんの実家で母と由里子さんと一緒にお茶をしていた。
父のクリニックは水曜午後は休診。由里子さんはシフト制で、今日は休みだったため声が掛かった。
わりとこういう機会はちょくちょくあるものの、私まで誘われるのはそう多くはなかったのに最近はよく呼ばれる気がする。
それというのも……。
「で?」
「結婚式はいつするの?」
この手の話題をするためだ。
実のところ、私はまだ胸中複雑……というか、まだ実感がなくて自分自身現状に気持ちが追いついていない部分がある。だから、結婚式とか言われてもどこか他人事。
「え? うーん……どうなんだろう。っていうか、しないかも……?」
「だめよ! ちゃんと晴れ姿を残しておかなきゃ!」
「そうねえ。本音を言えば、うちは澪しかいないわけだから。人生で一度きり、親として結婚式に出てみたいところねえ」
たじろぎながら答えると、由里子さんが即否定し、熱弁をふるう。それに続いて母までもが間接的に急かしてきた。
結婚式か……。
そういえば結城さんは、自分の年齢もそう若い方ではないし資金も掛かるからと結婚式はしないって言ってたな。
わりと今の時代はしない人も一定数いるようだけど……。自分のこととなると……。
結婚式を挙げたいってあまり想像したことがないかもしれない。それって、めずらしいだろうか。
私はただ長年密かに文くんを想っていただけで、年齢を重ねるにつれ、望みが叶う可能性は低いと思い込んできた。
あ、だけど幼少期の頃なら、薄っすらと『花嫁さん』に憧れていた時期はあったような気もする。
大人になった今、きちんと考えてみたら――私はどうしたいのかな。
正直言えば、どっちでもいい。彼と一緒にいられる今が十分幸せで、他にはなにもいらないかなって思ってしまう。
けれども、今みたいに親の気持ちを聞くと……。
色々と考えあぐねている間にも、母たちの会話は進んでいく。