外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
心機一転のつもりで、ずっと黒髪ロングのワンレンヘアだった髪に前髪を作り、少し明るいブラウンヘアにカラーチェンジした。
髪型を変えたことがこれまでなかったから、明るい髪色や前髪をつくった姿が自分自身しばらく見慣れなかったくらいだ。
自分では変えないほうが良かったかもなんて思ったけれど、これが意外と好評で『すごくいい!』とよく言われる。
前髪をつくったことで、実年齢より若く見えるらしい。
「そう? まぁ、たまには気分転換? 心機一転? みたいな感じかな。佑華さんは元気? 一週間くらい前に会ったけど」
「ああ、変わらず」
「そう。七央は、フライト?」
「今さっき戻った。シンガポールから」
そう答えた七央は、私の傍らにあるキャリーバッグをちらりと見遣る。そして、「またどっかに仕事か」と訊いた。
「うん。モルディブにね。でも、今回は一週間で戻ってくるけど」
「そうか」
「帰ってきたら、お土産持って行くって佑華さんに伝えておいて」
「わかった。気をつけて行けよ」
母と同じく、私が海外に行くことは七央にとってももう普通のことで、ちょっとその辺に出かけるような見送り方が当たり前。
七央は「じゃ」と短く言って、ターミナルを歩いて行った。