外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


「綺麗だ」


 恥ずかしいと思う隙も与えず、大河内さんは胸元にキスの雨を降らせていく。


「あまり、見ないでください。あっ──」


 胸の膨らみを寄せるようにされて、一際高い声が口から飛び出した。


「それは難しいお願いだな」


 さっきまでの紳士だった大河内さんが嘘のように、どこか意地悪な囁きと微笑で攻められる。

 それでも私に触れる熱い指は優しくて、不安もなく身を任せられた。

 一糸まとわぬ姿になってからは、じっくり時間をかけて大河内さんは私の体を暴いていく。

 着衣ではわからなかった無駄な肉のない逞しい体に、高鳴り続ける鼓動は痛いほど打ち鳴る。

 抱き締められると体は火照っていて、それだけでとろけてしまいそうだった。

 私への気遣いを垣間見せながら、ゆっくりと彼の熱が入ってくる。

 久しぶりのことで受け入れられるか心配が頭を過ったけれど、それは不要なほどすんなりと深くまで繋がった。


「大丈夫?」

「はい……大丈夫、です」


 私の返事を聞くと、大河内さんは「少し、このままでいようか」と髪を撫でてくれる。

 欲望のままに暴走しないのははやり紳士だなと、こんな状況の中密かに思ってしまった。

< 100 / 254 >

この作品をシェア

pagetop