外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


『きっと、この先もうない。あなたのような人と居られるこんな夜』


 そう言った大河内さんは、たっぷり時間をかけて私を抱いた。

 焦らず丁寧な触れ方は彼に持っていたイメージ通りだったけれど、貪欲に何度も求められたのは意外だった。


「大河内さん……?」


 もしかしたら入浴中だろうか。部屋の中をキョロキョロしながらバスルームに行きかけ、テーブルの上に置いてあるメモに気がついた。

【急な仕事の連絡が入ったため、先に出ます。楽しい夜をありがとう。お元気で】

 達筆な走り書き。
 急いでいる中で書き残してくれたに違いない。


 急な仕事、か……。


 できればちゃんと口でお礼を言いたかったのに。

 最後に書かれた〝お元気で〟の文字にわずかに胸がきゅっと締め付けられる。

 メモを手に取り、しばらくぼんやりと大きな窓から海を眺めていた。

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