外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「やっぱりお見合いはしたくない」と、変わらぬ意思はもちろん伝えた。
だけど、「もういい加減にしなさい」と母は半ば呆れた様子だった。
最後の悪あがきとばかりに写真は受け取らずその場を去ったけれど、翌日しれっと自室に置かれていた。
「美鈴、大丈夫?」
行かないと意地を張って拒否をしていたときは高圧的な姿勢だった母も、観念して付いて来た今日の私には優しい。
今日は朝から機嫌が良く、このお見合いへの期待度がかなり高いことが窺える。
葉子伯母さんが見つけてきた今日のお相手は、私より五個年上の三十四歳。仕事は行政機関にお勤めらしいけれど、お見合いを拒否した私は詳しく知ろうともしなかった。
母は「エリートよ!」と私に売り込むように言っていたけれど、興味もない。
そんな調子で結局、届いていたお見合い写真も表紙を開かず今日を迎えている。
写真で顔を見たところで、私の気が変わることもない。