外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「失礼します……」
明るい部屋へと入ると、奥に広がる立派な日本庭園が目に飛び込んでくる。
用意された席にはすでに三人の先客がいて、座敷の席で腰を上げ立ち上がっていた。
え……?
両親と思われるふたりの手前、こちらに向かって頭を下げたすらりとした長身。
やけに似ている。他人の空似。そんなことを思っているうちに、顔を上げた相手と視線が重なり合う。
「あっ……」
驚き目を見開きながらも、それでもまだ疑ってかかる。
こんなに似ている人がいるなんて──そうとしか思えなかった。
だけど、何かを予感するように心拍数は着実に上がっていく。
「美鈴さん。大河内と申します」
三人の真ん中の席の母親と思われる女性がにこやかに挨拶をして、まさかという疑いは打ち砕かれた。