外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
そこから、どういう流れで挨拶をし、席に腰を下ろしたのかはわからない。
気づけば正面に大河内さんがいて、目の前には料理が運ばれていた。
この部屋に入って大河内さんと再会してから、思考力を奪われてしまったように頭の中は混乱を極めている。
確かに、葉子伯母さんから相手の方は行政機関にお勤めの人だとは情報を得ていた。
だけど、外務省に勤める外交官だとは知らなかった。
いや、話はしていたのかもしれないけれど、気が進まない私が聞いていなかっただけなのかもしれない。
そもそも、お見合い写真も見ていなかったのだ。
もしちゃんと中を確認していれば、今日の相手は大河内さんだってわかったわけで……。
だからなのか、向かいに座る大河内さんに私を見て驚いた様子は初めからなかった。
大河内さんのほうは今日の縁談の相手が私だとわかっていて、今日この席に臨んだということになるけど……なぜ?