外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


「晶も昔はカメラ、少し触っていたよな」


 お父様に話を振られた大河内さんは、「はい」と丁寧に返事をする。

 そういえばモルディブで出会ったとき、カメラを触っていた時代があったと言っていたことを思い出す。


「ちょっと触ってみるかって勧めて撮った写真が、何かの賞をとったこともあったな」

「そうですね。懐かしい」


 ご両親との間に流れる空気も非常に上品で、穏やかな品のいい家庭で育ったことが垣間見える。

 それにしても、このご両親にしてこの息子ありといった感じ。

 お父様はすらりと背が高くスーツが似合い、白髪も様になるダンディーな男性。お母様は整った顔立ちの、まさに日本美人といったところだ。

 このご両親からいいところをすべて受け継いだのが大河内さんなのだろう。

 仕事の話や趣味の話で会食の場は盛り上がり、和やかな食事の時間はゆっくりと流れていった。

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