外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


「お久しぶりです。お元気でしたか」

「はい。変わらずです」


 いざ話を始めていいとなると、どこから、何から切り出せばいいのか混乱する。

 考えすぎておかしなことを言ってしまいそうで、心の中で自分に〝落ち着け〟と呪文を唱えた。


「大河内さん、日本に戻られたんですか?」

「ええ。しばらくは国内勤務となったので、先日帰国しました」

「そうでしたか。それで、今日のお見合いに……?」

「そうですね。言っていた通り早速話がきました」


 日本に帰国すれば縁談はすぐにあるだろうと大河内さんは言っていた。

 その相手が私とは、さすがに驚いただろうけど……。


「嘉門さんも、早速の見合い話でしたね。もしかしたら、今日より前にもお見合いの席に連れて行かれてたり……?」

「いや、さすがにそれはないです! モルディブから帰国して、今日が初です」

「ですよね。あれだけ見合いを拒否していましたから、恐らく今日会うまで相手が私だと知りもしないで連れてこられた……といったところでしょうか」


ずばり当てられてしまい「えっ」と驚きの声が飛び出す。

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