外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
素直に祝福する気持ちは大きかった。だけど同時に、心にぽっかり穴が開いたような感覚を味わった。
七央が知らない人になってしまった──そんな心境だった。
だけど、大切な存在だからこそ、好きだからこそ、幸せになってほしいという気持ちが一番だった。
募らせてきた自分の想いを葬らなくてはならないとわかったとき、不思議と涙は出なかった。
空虚な感覚は味わったけれど、悲しいや苦しい思いはしなかったのだ。
結局のところ、今となっては七央に対する想いは〝恋〟という一文字だけでは片付けられないものだったのだろうと考えている。
家族のような身近な存在で、兄のように慕い、頼もしい存在。
これからは今まで通りとはいかないけれど、幼なじみとしては引き続き付き合っていきたいし、その大切な幼なじみが選んだパートナーとも仲良くできたらと思っている。
七央の結婚は、私の中で自分を見つめ直すいいきっかけとなった。