外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


「気付いてたんですか?」

「ええ、もちろん。さっき顔を合わせたときのあなたの反応を見れば、だいたいのことは想像がつきました。どうせ断る見合いだしと、写真を開くこともしなかったのだろうと」


 そこまで言った大河内さんはフッと笑みをこぼし、「嘉門さんらしいって言ったら、らしいですけど」と付け加えた。


「やっぱり、大河内さんエスパーですね……ご名答です」


 これだけ気持ちいいくらい見事に当てられれば完敗だ。穏やかで涼しい顔をして鋭いから、大河内さんにはぎくりとさせられることがある。

 私はそんな状態で挑んだ今日の席だったけど、驚かなった大河内さんのほうは事前に私が相手の縁談だと確認済だったということ。

 だとすれば、気を遣って顔など合わせず、会う前に断っても良かったはずだ。

 お見合いはしたくない、と私にだって話していたのだから。

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