外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~
「そ、それはお互い様です。私だって、それは──」
これ以上張り合って言い返すと墓穴を掘ると気づいて、静かに口を閉ざす。私の悪い癖だ。
「それは良かった。それならこの話は終わりにしましょう」
「え? いや、どうして終わるんですか!」
再度食いつく私を、大河内さんは少し呆れたように苦笑する。
「では、その代わりといったら何ですが、今日の縁談を進めるという交換条件でどうでしょうか?」
「え?」
突然話が飛躍して理解に苦しむ。
支払いを受け取らない交換条件として、縁談を進めるとはどういうこと?
それでは、大河内さんにとってマイナスなことだらけだ。
「あの、すみません。全然意味がわからないんですけど。それって、大河内さんにメリット何もないと思うのですが」
「メリットなら十分にあります。もう縁談が持ち上がることがなくなる」
「あ……」
なるほど、そういうメリットか。