外交官と仮面夫婦を営みます~赤ちゃんを宿した熱情一夜~


「そ、それはお互い様です。私だって、それは──」


 これ以上張り合って言い返すと墓穴を掘ると気づいて、静かに口を閉ざす。私の悪い癖だ。


「それは良かった。それならこの話は終わりにしましょう」

「え? いや、どうして終わるんですか!」


 再度食いつく私を、大河内さんは少し呆れたように苦笑する。


「では、その代わりといったら何ですが、今日の縁談を進めるという交換条件でどうでしょうか?」

「え?」


 突然話が飛躍して理解に苦しむ。

 支払いを受け取らない交換条件として、縁談を進めるとはどういうこと?

 それでは、大河内さんにとってマイナスなことだらけだ。


「あの、すみません。全然意味がわからないんですけど。それって、大河内さんにメリット何もないと思うのですが」

「メリットなら十分にあります。もう縁談が持ち上がることがなくなる」

「あ……」


なるほど、そういうメリットか。

< 124 / 254 >

この作品をシェア

pagetop